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「前立腺がん」と診断されたとき、多くの方が真っ先に気になるのが「余命」や「生存率」ではないでしょうか。前立腺がんは男性特有のがんであり、日本でも罹患者数が年々増加しています。しかし、他のがんと比較すると進行が緩やかなケースが多く、早期発見・早期治療により長期生存が期待できるがんでもあるのです。
本記事では、前立腺がんの余命やステージ別の5年生存率、進行スピードや治療法について詳しく解説します。
前立腺は男性の膀胱の下に位置する臓器で、精液の一部を分泌する役割を担っています。前立腺がんは、この前立腺の細胞ががん化することで発症する疾患です。
日本における前立腺がんの罹患者数は2020年には約10万人を超え、男性のがんの中で最も多いがんとなりました。発症リスクは50歳を過ぎると急激に高まり、70代以降で特に多く見られます。
高齢になるほど患者数は増加しますが、若い人でも罹患する可能性があるがんです。若いからと言って油断してはいけません。
前立腺がんは初期段階では自覚症状がほとんどないことが特徴です。がんが進行するにつれて、頻尿や残尿感、排尿時の痛みや尿の勢いが弱くなるといった排尿障害が現れるでしょう。前立腺は尿道を取り囲む位置にあるため、がんが大きくなると尿道が圧迫されるのです。
また、血尿や精液に血が混じる血精液症が見られることもあります。骨やリンパ節に転移すると腰痛や足のむくみなどの症状も出現するため、進行してはじめて気が付いたという事例もあります。
前立腺がんは「がんの中では進行が遅い」といわれることが多いですが、すべてが同じ速度で進行するわけではありません。前立腺がんの進行スピードについて詳しく解説します。
前立腺がんの進行速度は、がん細胞の悪性度によって大きく異なります。悪性度が低いがんは10年以上かけてゆっくり進行することもあります。一方、悪性度が高いがんは数年で急速に進行し、転移を起こすこともあるのです。
がんの悪性度を判断する指標として「グリーソンスコア」が用いられ、2〜10の数値で表されます。一般的にグリーソンスコア6以下は低悪性度、7は中悪性度、8以上は高悪性度に分類されます。
PSA(前立腺特異抗原)は前立腺から分泌されるタンパク質で、血液検査で測定できます。前立腺がんがあるとPSA値が上昇することが多いため、がんの発見や経過観察に広く用いられています。
一般的にPSA値が4.0ng/mL以上の場合は精密検査が推奨され、30以上や100以上といった高値を示す場合は進行や転移の可能性が高くなちがちです。ただし、前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇するため、総合的な評価が必要です。
前立腺がんの進行度は、TNM分類とステージ(病期)によって評価され、治療方針の決定や予後の予測に重要な役割を果たします。
TNM分類は、がんの進行度を3つの要素で評価する国際的な分類法です。TNMはそれぞれの意味を表す頭文字であり、次のような意味となっています。
T1は触診や画像検査で確認できない小さながん、T4は周囲の臓器に浸潤したがんを指します。NとMは転移の有無を示すものであるため、進行状況を判断するのに役立つでしょう。
前立腺がんのステージはTNM分類にPSA値とグリーソンスコアを組み合わせてI〜IVに分類されます。
ステージIはがんが前立腺内にとどまりPSA値10ng/mL未満かつグリーソンスコア6以下の最も早期の状態です。ステージIIも前立腺内にとどまりますがPSA値やグリーソンスコアがより高い状態になります。
ステージIIIはがんが前立腺の被膜を超えて精嚢などに広がった局所進行がん、ステージIVは骨や肺などへの遠隔転移を伴う進行がんです。それぞれのステージがどの段階に当てはまるのかを、しっかりと理解しておきましょう。
前立腺がんはがん全体の中でも生存率が高く、早期発見された場合の予後は極めて良好です。全体的な5年生存率に加えて、ステージ別・高齢者の5年生存率について見てみましょう。
がん研究振興財団の統計によると、前立腺がんの5年相対生存率は約95〜99%と非常に高い数値を示しています。相対生存率とはがん以外の死因を除外し、がんのみによる生存状況を示す指標です。
高い生存率の背景には、前立腺がんの多くが進行が緩やかであること、PSA検査による早期発見が普及していること、効果的な治療法が確立されていることが挙げられます。
ステージI〜IIの限局性がん(前立腺内にとどまるがん)の5年生存率はほぼ100%に近く、早期のうちに手術や放射線治療を受けることで根治が期待できます。ステージIIIの局所進行がんでも5年生存率は約90%以上を維持可能です。
一方、ステージIVの遠隔転移を伴うがんでは5年生存率は約30〜50%程度まで低下し、転移の範囲や治療への反応性によって余命は数ヶ月から10年以上と幅広い分布を示します。
前立腺がんは高齢者に多いがんであり、年齢別の生存率も重要な情報となります。70代で診断された場合の5年生存率は約85%程度、80歳以上では約57%程度という報告があります。
ただし高齢者の場合は心疾患や脳血管疾患など前立腺がん以外の死因の影響も大きいため、がんのみによる生存率とは異なる点に注意が必要です。治療方針はがんの進行度や全身状態、本人の希望を総合的に考慮して決定されます。
ステージ4の前立腺がんは骨やリンパ節、肺などへの遠隔転移を伴う進行がんです。完治は難しいとされますが、治療法の進歩により長期生存が可能なケースも増えています。ケース別での余命の平均を見てみましょう。
ステージ4の前立腺がんの平均余命は転移の範囲や治療への反応によって大きく異なり、一般的には2〜5年程度とされますが10年以上生存する方も少なくありません。ただし、骨転移のみの場合と内臓への転移を伴う場合では後者の方が予後が厳しくなる傾向にあります。
またホルモン療法への感受性も予後に大きく影響し、効きやすいがんは長期にわたってコントロールが可能な場合があります。
前立腺がんは骨に転移しやすく、骨転移は最も多い転移パターンです。骨転移が見つかった場合の5年生存率は約30〜40%程度とされています。主な症状として腰痛や背中の痛み、骨折リスクの増加などがあり、転移部位が増えると痛みも強くなります。
治療にはホルモン療法に加えてゾレドロン酸やデノスマブといった骨転移治療薬、放射線治療、緩和ケアなどを組み合わせ、QOLを維持しながら生活を送ることが可能です。
リンパ節転移は前立腺がんが骨盤内のリンパ節やさらに遠くのリンパ節に広がった状態です。リンパ節転移のみの場合は骨転移と比較して予後が比較的良好なケースもあります。
症状としては足のむくみ(リンパ浮腫)が代表的で、リンパ液の流れが阻害されることで下肢に水分が溜まりやすくなります。治療はホルモン療法を中心に、化学療法や放射線治療を組み合わせて行われるのが一般的です。
前立腺がんの治療法はがんのステージや悪性度、患者の年齢や全身状態、本人の希望などを総合的に考慮して決定されます。代表的な治療法は、以下の5つです。
それぞれの特徴について、詳しく解説します。
監視療法は、低リスクの前立腺がんに対して行われる治療戦略です。すぐに積極的な治療を行わず定期的なPSA検査や画像検査でがんの進行を監視します。
前立腺がんの中には生涯を通じて症状を引き起こさないほど進行が緩やかなものもあり、そのようながんに手術や放射線治療を行うと治療に伴う副作用だけを被ることになりかねません。監視療法は過剰治療を避けるための選択肢として位置づけられています。
手術療法は前立腺と精嚢を摘出する前立腺全摘除術が標準的で、限局性の前立腺がんに対してがんを完全に取り除くことを目指します。現在ではロボット支援手術(ダヴィンチ手術)が普及し、従来の開腹手術と比べて出血量が少なく術後の回復も早いとされている治療法です。
主な合併症として尿失禁と勃起障害があり、尿失禁は多くの場合術後数ヶ月で改善しますが、一部では長期間続くこともあります。
放射線療法は高エネルギーの放射線でがん細胞を死滅させる治療法で、手術と同等の治療効果が期待でき体への負担が比較的少ないことがメリットです。
外照射療法は体の外から放射線を照射する方法で、IMRTやVMATといった技術により正常組織への影響を最小限に抑えながらがんに高線量を集中させることが可能です。小線源治療は放射性物質を含む小さなカプセルを前立腺内に埋め込む方法で、低悪性度の限局性がんに適しています。
前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲン)によって増殖が促進される性質があり、ホルモン療法は男性ホルモンの分泌や作用を抑えてがんの増殖を抑制します。転移性の前立腺がんや手術・放射線治療の補助療法として用いられる手法です。
LH-RH作動薬・拮抗薬は精巣からのホルモン分泌を抑え、抗アンドロゲン剤はホルモンががん細胞に作用するのをブロックします。新世代のARSI(エンザルタミド、アビラテロンなど)は去勢抵抗性前立腺がんにも効果が期待できます。
化学療法は抗がん剤を使用してがん細胞を攻撃する治療法で、ホルモン療法が効かなくなった去勢抵抗性前立腺がんに対して用いられることが多いです。
ドセタキセルは標準的な抗がん剤であり3週間ごとに点滴投与され、ホルモン療法との併用で転移性前立腺がんの生存期間を延長することが示されています。カバジタキセルはドセタキセルが効かなくなった場合の二次治療として使用されます。
ホルモン療法を継続しても一定期間が経過するとがんが再び増殖を始めることがあり、この状態を去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)と呼びます。精巣からの男性ホルモン分泌を十分に抑えた状態でも進行するがんで、ホルモン療法開始から平均2〜3年程度で発症することが多いとされているものです。
CRPCになると予後は厳しくなりますが、近年は新しい治療薬の開発により生存期間が延長しています。治療選択肢として新世代ホルモン療法(ARSI)や化学療法、PSMA標的治療、特定の遺伝子変異を持つがんに対する免疫療法などがあります。
前立腺がんが末期に進行するとさまざまな症状が現れます。そのため、症状をコントロールしQOLを維持するための緩和ケアが重要な役割を果たすのです。末期の症状とケアについて解説します。
骨転移による痛みは前立腺がん末期で最も多く見られる症状のひとつで、腰や背中、骨盤などに痛みを感じることが多くあります。そのため、鎮痛薬や放射線治療、骨転移治療薬などで緩和を図るのが一般的です。
また、排尿障害として尿が出にくい、頻尿や血尿などの症状が見られ、尿道カテーテルの留置や薬物療法が行われます。足のむくみはリンパ節転移によりリンパ液の流れが阻害されることで生じ、弾性ストッキングやマッサージで対応します。
緩和ケアはがんに伴う身体的・精神的な苦痛を和らげ、患者とご家族の生活の質を向上させることを目的としたケアです。末期だけでなく診断時から治療と並行して行われることが推奨されています。
痛みのコントロールではWHO方式の疼痛ラダーに基づき段階的に鎮痛薬を使用し、多くの方の痛みを軽減できます。精神的サポートも重要な要素で、心理士やソーシャルワーカーが不安やうつに対応可能です。在宅療養を希望する場合は訪問診療や訪問看護を利用することも可能です。
前立腺がんは男性に最も多いがんのひとつですが、他のがんと比較して生存率が高く適切な治療により長期生存が期待できます。早期(ステージI〜II)に発見された場合の5年生存率はほぼ100%に近く、ステージIIIでも90%以上を維持しています。
ステージIVになると生存率は低下しますが、ホルモン療法や化学療法、新世代の治療薬により余命は延長傾向にあります。予後はステージや悪性度、PSA値、治療への反応性など多くの要因で異なるため、担当医とよく相談して自分に合った治療法を選択することが重要です。
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