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私たちの体には、病原体やがん細胞から身を守る免疫システムが備わっています。その中でも特に重要な役割を果たすのが「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)」です。NK細胞は「生まれながらの殺し屋」という名前のとおり、特別な訓練を受けなくても異常な細胞を攻撃できる優れた免疫細胞です。
本記事では、NK細胞の基本的な働きから活性化の方法、がん治療への応用まで詳しく解説します。がん治療の一環でNK細胞による治癒を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
NK細胞は、リンパ球の一種で、体内をパトロールしながら異常な細胞を監視・攻撃する免疫細胞です。「Natural Killer cell(ナチュラルキラー細胞)」の略称で、1970年代に発見されました。
免疫システムには、大きく分けて「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があります。NK細胞は自然免疫に分類され、生まれつき備わっている防御機能として働きます。獲得免疫のT細胞やB細胞が抗原の認識と記憶に数日を要するのに対し、NK細胞は即座に反応できるため、感染症やがんの初期防御において極めて重要な役割を担っているのです。
NK細胞の最大の特徴は、MHCクラスⅠ分子の発現低下を認識して攻撃する能力です。通常、健康な細胞の表面にはMHCクラスⅠ分子という目印が存在しますが、がん細胞やウイルス感染細胞はこの目印を失っていることがあります。NK細胞は「missing-self(失われた自己)」と呼ばれるこの状態を検知し、異常な細胞として攻撃対象とします。血液中のリンパ球のうち、約10〜15%がNK細胞で、常に体内を循環しながら異常細胞を探し出しているのです。
NK細胞は、生体防御において多様な役割を果たしています。具体的には以下のとおりです。
がん細胞の排除だけでなく、感染症の初期防御など、健康維持に欠かせない機能を持っています。それぞれ詳しく解説します。
健康な人の体内でも、毎日数千個のがん細胞が発生していると考えられています。NK細胞はこれらのがん細胞を発見すると、細胞膜に穴を開けて破壊する「細胞傷害作用」を発揮する仕組みを備えているのです。
攻撃の際には、パーフォリンやグランザイムといった細胞傷害性物質を放出します。パーフォリンが標的細胞の膜に穴を開け、そこからグランザイムが侵入してアポトーシス(細胞死)を誘導します。迅速かつ効率的に異常細胞を排除できる仕組みです。
ウイルスに感染した細胞は、正常な細胞とは異なる表面マーカーを示します。NK細胞はこの変化を検知し、感染が広がる前に感染細胞を破壊します。インフルエンザウイルスやヘルペスウイルスなど、多くのウイルス感染症において初期防御の最前線に立っているのです。
獲得免疫が本格的に機能するまでの数日間、NK細胞がウイルスの増殖を抑える重要な役割を担います。ただし、すべてのウイルスに即座に対応できるわけではない点に注意してください。
NK細胞は単に細胞を破壊するだけでなく、インターフェロンγ(IFN-γ)などのサイトカインを産生します。インターフェロンγは、マクロファージや樹状細胞、T細胞などに働きかけ、免疫応答を増強させるのです。
特にがん治療において、NK細胞が産生するインターフェロンγは腫瘍微小環境を変化させ、他の免疫細胞が腫瘍内に侵入しやすくする効果も報告されています。
NK細胞の優れた抗腫瘍効果を利用したがん治療法が「NK細胞療法」です。がん免疫療法のひとつとして、多くの医療機関で実施されています。仕組みや特長、NK細胞療法の注意点を見てみましょう。
NK細胞療法は、患者自身の血液からNK細胞を採取し、体外で大量に培養・活性化させた後、再び体内に戻す治療法です。基本的な流れは、採血、分離、培養(約2週間)、投与という順序で行われます。培養により、採取時の数百倍から数千倍のNK細胞を得ることができ、活性化も大幅に高まります。
自分自身の細胞を使用するため拒絶反応がほとんどなく、化学療法や放射線治療のような激しい副作用がありません。また、特定の抗原を認識する必要がないため、血液がん、固形がんを問わず、さまざまな種類のがんに対して効果を発揮できます。
特に以下の病気での効果が報告されています。
また、標準治療との併用も可能で、相乗効果が期待できます。既存の治療法と組み合わせてみるのも良いでしょう。
NK細胞療法は保険適用外の自由診療のため、治療費は全額自己負担となります。1クール(6回投与)で数百万円の費用がかかることもあり、経済的な負担は大きくなりがちです。
また、細胞の培養に約2週間必要なため、すぐに治療を開始できません。効果にも個人差があり、すべての患者に同じように効果が表れるわけではないことを理解した上で検討する必要があります。

NK細胞の活性は加齢やストレス、生活習慣などによって低下することがわかっています。日常生活で実践できるNK細胞の活性化方法もあります。具体的には、以下の4つです。
それぞれ詳しく解説します。
適度な運動はNK細胞の活性を高めることが多くの研究で示されています。ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を週3〜4回、30分程度行うことが推奨されます。
ただし、過度な運動は逆にNK細胞の活性を低下させる可能性があるため、自分の体力に合わせた適度な運動を継続することが大切です。運動後は体が温まり血流が良くなることで、NK細胞が体内を循環しやすくなり、異常細胞を発見する機会が増えます。
いきなり激しい運動をするのではなく、上記のような運動を習慣にするように務めましょう。
睡眠不足はNK細胞の活性を著しく低下させます。7〜8時間の十分な睡眠を確保し、規則正しい生活リズムを保つことが重要です。睡眠中には成長ホルモンやメラトニンなどのホルモンが分泌され、免疫システムの修復と強化が行われます。
良質な睡眠は、NK細胞の活性維持に欠かせません。また、就寝時間と起床時間を一定にすることで体内時計が整い、免疫機能も最適化されます。睡眠時間だけではなく、睡眠の質を高めるための努力をしましょう。
慢性的なストレスは、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を促し、NK細胞の活性を低下させます。瞑想やヨガ、深呼吸などのリラクゼーション法を取り入れ、ストレスを適切に管理しましょう。
また、笑うこともNK細胞の活性化に効果的であることが研究で示されています。日常生活の中で笑う機会を増やすことも、免疫力の向上につながります。趣味の時間を持つことや、親しい人とのコミュニケーションもストレス軽減に役立つのです。
栄養バランスの取れた食事は、免疫システム全体の機能を支えます。特にビタミンC(柑橘類、ブロッコリー)、ビタミンE(ナッツ類、アボカド)、亜鉛(牡蠣、赤身肉)、セレン(魚介類)などの栄養素はNK細胞の活性化に重要とされています。
また、NK細胞は腸内環境、免疫機能と密接な関係があるため、ヨーグルトや納豆、味噌などの発酵食品も積極的に取り入れましょう。健康補助食品などに含まれる特定の乳酸菌株には、NK細胞活性を高める効果があることが研究で示されています。積極的に摂取すると良いでしょう。
NK細胞は、がん細胞やウイルス感染細胞を素早く発見・排除する優れた免疫細胞です。自然免疫の中心的な役割を担い、健康維持に欠かせない存在といえます。日常生活では、適度な運動や質の高い睡眠、ストレス管理やバランスの取れた食事など、基本的な生活習慣を整えることで、NK細胞の活性を高めることができます。積極的に取り入れるようにしてください。
NK細胞療法は副作用が少なく、他の治療法との併用も可能な点が魅力ですが、自由診療であることや効果に個人差があることを理解した上で検討する必要があります。免疫力は日々の小さな積み重ねによって維持されます。NK細胞の働きを理解し、適切にサポートすることで、病気に負けない強い体づくりを目指しましょう。
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