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がん治療の選択肢として注目される免疫チェックポイント阻害剤。ノーベル賞受賞でも話題となった治療法ですが、「高額な治療費がかかる」という情報に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、免疫チェックポイント阻害剤による治療の実際の流れと費用、保険適用の条件や高額療養費制度の活用方法を解説します。治療を検討されている方が、費用面での不安を軽減し、安心して治療に臨めるよう、具体的な情報を解説します。
免疫チェックポイント阻害剤は、私たちの体に備わっている免疫システムを活用してがん細胞を攻撃する治療薬です。がん細胞が免疫細胞にかけている「ブレーキ」を解除し、免疫細胞であるT細胞が本来の力を発揮できるようにします。
従来の抗がん剤ががん細胞を直接攻撃するのに対し、免疫チェックポイント阻害剤は免疫細胞の働きを調整することで間接的に攻撃します。効果が現れるまで数週間から数か月かかる場合もありますが、一度効果が出ると長期間持続するケースも多く見られるようです。
このような特徴により、一部の患者さんでは長期的な病勢コントロールが期待できるとされています。
現在、主に3つのタイプの免疫チェックポイント阻害剤が使用されています。
PD-1阻害剤では、オプジーボ(ニボルマブ)やキイトルーダ(ペムブロリズマブ)が代表的です。最も広く使用されているタイプで、多くのがん種で保険適用されています。T細胞の表面にあるPD-1というタンパク質に結合し、がん細胞からの攻撃抑制シグナルをブロックします。
PD-L1阻害剤には、テセントリク(アテゾリズマブ)、イミフィンジ(デュルバルマブ)、バベンチオ(アベルマブ)などがあり、がん細胞側のPD-L1分子が標的です。PD-1阻害剤と似た作用機序ですが、標的となる分子が異なるため、効果や副作用のプロファイルにも若干の違いがあります。
CTLA-4阻害剤のヤーボイ(イピリムマブ)は、T細胞の活性化初期段階で働く分子を阻害します。主に他の免疫チェックポイント阻害剤との併用療法で使用され、相乗効果が期待できる一方、副作用のリスクも高まる可能性があるため慎重な管理が必要です。
治療の流れは、一般的に以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
治療を開始する前に、免疫チェックポイント阻害剤が適切かどうかを判断するための検査が行われます。がんの組織を採取し、PD-L1発現率やマイクロサテライト不安定性(MSI-High)などのバイオマーカーを測定するのが一般的です。
これらの検査も保険適用の範囲内で実施されます。検査結果に基づいて主治医が治療方針を決定し、単独療法か併用療法かも判断します。患者さんの全身状態や臓器機能も評価され、治療に耐えられるかどうかも確認されるため、必ず検査を受けましょう。
免疫チェックポイント阻害剤は、点滴による静脈内投与で行われます。外来治療が基本で、入院の必要はありません。投与時間は薬剤によって異なりますが、通常30分~90分程度です。
投与スケジュールは薬剤によって異なります。オプジーボの場合は2週間に1回、キイトルーダは3週間に1回が標準的です。治療は効果が続く限り継続され、数か月から1年以上にわたることも珍しくありません。
治療中は定期的な画像検査(CTやMRI)で効果判定を行います。通常2〜3か月ごとに実施され、腫瘍の大きさの変化を確認します。血液検査は投与前に毎回行われ、肝機能や腎機能、甲状腺機能などをモニタリングします。
初回の効果判定は、通常治療開始から2〜3か月後に行われます。腫瘍が縮小している場合は治療を継続し、進行している場合は治療方針の見直しを検討する流れです。
免疫チェックポイント阻害剤の特徴として、「偽増悪」という現象があります。一時的に腫瘍が大きくなったように見える現象ですが、その後縮小することがあるため、慎重な判断が必要です。
効果が確認された場合、病勢が進行するまで、あるいは忍容できない副作用が出現するまで治療を継続します。一部のがん種では、一定期間治療を行った後に中止することもあります。
2025年11月現在、多くのがん種で免疫チェックポイント阻害剤の保険適用が認められています。
肺がんでは、非小細胞肺がんの一次治療から使用できる場合があり、PD-L1発現率によって単独療法か併用療法かが決まります。PD-L1発現率が50%以上の場合は単独療法の一次治療が可能です。小細胞肺がんでは化学療法との併用で一次治療から使用されます。
消化器がんでは、胃がんや食道がん、大腸がん(MSI-High)で保険適用があります。特に胃がんでは、HER2陰性の切除不能進行・再発例で化学療法との併用が可能です。食道がんでも化学療法との併用療法が一次治療から使用できるケースが増えています。
泌尿器・婦人科がんでは、腎細胞がんや尿路上皮がん、子宮頸がんなどで使用できます。腎細胞がんでは一次治療から使用可能なケースが増え、分子標的薬との併用療法も選択肢となっているのです。
皮膚がん・頭頸部がんでは、悪性黒色腫(メラノーマ)が最も早く承認されたがん種で、単独療法と併用療法の両方が可能です。日本で最初に承認された経緯があり、治療実績も豊富に蓄積されています。頭頸部扁平上皮がんでも、再発または遠隔転移を有する症例で保険適用されています。
多くのがん種では標準的な化学療法を行った後の二次治療以降で使用されますが、バイオマーカー検査の結果によっては一次治療から使用できることもあるでしょう。保険適用外での使用は全額自己負担となるため注意が必要です。
免疫チェックポイント阻害剤は、がん治療に有効な治療法です。一方で、副作用があるのも事実です。詳しく見てみましょう。
免疫チェックポイント阻害剤には、免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれる特有の副作用があります。免疫システムが活性化されることで、がん細胞だけでなく正常な臓器にも免疫反応が起こる場合があるのです。
代表的な副作用として、次のようなものがあります。
何かしらの症状が現れた場合は、すぐに主治医に相談しましょう。
多くの免疫関連有害事象は、ステロイド薬による治療が有効です。軽度の場合は外来で管理できますが、重篤な場合は免疫チェックポイント阻害剤の投与を一時中断し、ステロイド薬の点滴治療や入院が必要になることもあります。定期的な血液検査や画像検査により、副作用を早期に発見することが重要です。
患者自身も体調の変化に注意を払い、発熱や呼吸困難、激しい下痢や皮膚の変化などがあれば、すぐに医療機関に連絡しましょう。副作用の治療費も保険適用され、高額療養費制度の対象です。適切な管理により、多くの場合は治療を継続できます。

免疫チェックポイント阻害剤による治療は高額ですが、具体的にどれくらいの費用がかかるのでしょうか。薬剤費だけでなく、検査費用や処置料など、治療全体でかかる費用を詳しく見ていきましょう。
薬剤費は、使用する薬剤の種類や量によって変動します。
オプジーボ(ニボルマブ)を例に見ると、2024年時点で100mgあたり約10万円の薬価となっています。承認当初は100mgあたり約73万円という極めて高額な薬価でしたが、段階的に引き下げられました。
また、体重60kgの患者さんが標準的な投与量(体重1kgあたり3mg)で治療を受ける場合、1回の投与で約18万円の薬剤費がかかります。2週間に1回の投与スケジュールのため、月2回で約36万円です。年間に換算すると約432万円という高額な費用になります。
キイトルーダなど他の薬剤も同程度の価格帯で、3週間ごとの投与が標準です。投与1回あたりの費用は高くなりますが年間の投与回数は少なくなり、結果として年間費用は同水準です。
薬剤費以外にも、投与のための処置料(点滴料、注射手技料など)が1回あたり数千円かかります。外来管理料や再診料なども加算されます。効果判定のためのCT検査は1回あたり約2万円〜3万円、MRI検査は約3万円〜5万円です。
2〜3か月ごとに実施するため、年間で10万円〜20万円程度の検査費用が発生します。血液検査は毎回の投与前に実施され、1回あたり数千円です。月2回の投与なら月1万円程度、年間で12万円程度が目安となります。
副作用が出現した場合、その治療費も別途必要です。軽度なら外来での薬物療法で対応できますが、重篤な場合は入院治療が必要になることもあります。
治療費が高額になっても、高額療養費制度を活用することで自己負担額を大幅に軽減できます。所得に応じた上限額や、その制度をさらに有効に活用するための手続きについて解説します。
高額療養費制度により、1か月間の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が払い戻されます。所得に応じて自己負担限度額が設定されているため、実際の支払いは大幅に軽減される仕組みです。
70歳未満で年収約370万円〜約770万円の方の場合、月額80,100円+(医療費-267,000円)×1%が上限です。月の医療費が100万円なら、自己負担額は約87,500円となります。年収約370万円以下の方は月額5万7,600円が上限、年収約1,160万円以上の方は月額252,600円+(医療費-84万2,000円)×1%が上限です。
直近12か月間に高額療養費制度を3回以上利用した場合、4回目からは「多数回該当」として自己負担限度額がさらに引き下げられます。年収約370万円〜約770万円の方の場合、4回目以降は月額44,400円まで軽減されます。制度を正しく理解し、適切に活用しましょう。
事前に「限度額適用認定証」を取得すると、医療機関の窓口での支払いが最初から自己負担限度額までです。高額な医療費を一時的に立て替える必要がなくなるため、家計への負担が大きく軽減されます。健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険の窓口で申請でき、発行まで数日から2週間程度かかります。
治療開始が決まったらすぐに申請手続きを行いましょう。限度額適用認定証を医療機関に提示することで、窓口での支払いが最初から軽減された金額となり、一時的な高額支払いや払い戻し手続きの手間も省けます。免疫チェックポイント阻害剤による治療は長期間続くことが多いため、この制度を活用することで経済的負担を大幅に軽減できるのです。
結核菌製剤とオプジーボの併用群での臨床試験では併用した群がより効果を示しました。
これはオプジーボが腫瘍のバリアを取り払うイメージだとすると、BCG-CWSのような全身の免疫向上に係る可能性を示唆しております。
免疫チェックポイント阻害剤による治療は、外来での点滴投与が基本で、定期的な検査を行いながら継続します。薬剤費は年間400万円以上と高額ですが、保険適用と高額療養費制度により、多くの方にとって月額数万円程度の自己負担に抑えられるでしょう。
治療を検討する際は、保険適用の条件とバイオマーカー検査の結果を確認し、限度額適用認定証を早めに取得することが重要です。多数回該当による負担軽減も活用し、経済的負担を最小限に抑えるようにしてください。費用面での不安を軽減し、安心して治療に臨める環境を整えましょう。
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