銀座がん医療クリニック(がん免疫療法/東京) / 免疫療法とオプジーボの関係|がん治療の新たな選択肢を徹底解説

銀座がん医療クリニック

診療時間
火・木・金    10:00-13:00 / 14:00-17:00
土曜(第2・4) 10:00-13:00 / 14:00-17:00
休診          月・水・日・祝日

癌の治療について

HOME > 癌の治療について > 免疫療法とオプジーボの関係|がん治療の新たな選択肢を徹底解説

免疫療法とオプジーボの関係|がん治療の新たな選択肢を徹底解説

がん治療において、免疫療法は従来の抗がん剤とは異なるアプローチで大きな注目を集めています。その代表的な薬剤が「オプジーボ」です。2014年に世界初の免疫チェックポイント阻害薬として承認されて以来、多くのがん患者さんに新たな希望をもたらしてきました。

本記事では、免疫療法とオプジーボの関係性を明らかにしながら、その仕組みや効果、副作用と治療費用について詳しく解説します。

オプジーボとは?仕組みと効果

オプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる新しいタイプのがん治療薬です。日本の小野薬品工業が開発し、京都大学の本庶佑特別教授の研究成果をもとに実用化されました。本庶教授はこの業績により2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

従来の抗がん剤ががん細胞を直接攻撃するのに対し、オプジーボは私たちの体に備わっている免疫システムを活用してがん細胞と戦います。がん細胞を直接叩くのではなく、免疫細胞の働きを回復させることで間接的に抗腫瘍効果を発揮する点が最大の特徴です。

免疫チェックポイントとは

人間の体には、細菌やウイルスなどの異物を排除する免疫システムが備わっています。この免疫システムの中心的な役割を担うのがT細胞と呼ばれる白血球の一種です。T細胞は体内をパトロールし、異常な細胞を発見すると攻撃して排除します。

T細胞の表面にはPD-1という受容体が存在しており、正常な細胞を誤って攻撃しないよう、免疫反応にブレーキをかける役割を持っています。これが「免疫チェックポイント」と呼ばれる仕組みです。

がん細胞はこの仕組みを巧妙に悪用します。自らの表面にPD-L1やPD-L2というタンパク質を発現させ、T細胞のPD-1と結合することで、免疫細胞の攻撃を回避しているのです。がん細胞のPD-L1とT細胞のPD-1が結合すると、T細胞の働きが抑制され、がん細胞は免疫系の攻撃から逃れることができます。

オプジーボは、T細胞のPD-1に結合することで、がん細胞のPD-L1との結合を物理的にブロックします。その結果、ブレーキが解除されたT細胞は本来の能力を取り戻し、がん細胞を認識して攻撃できるようになるのです。

期待される効果と特徴

オプジーボによる治療の最大の特徴は、作用の持続性です。化学療法は投与中のみ効果を発揮しますが、オプジーボでは治療終了後も免疫記憶により長期的な効果が続く可能性があります。一部の患者さんでは、治療を中止した後も長期間にわたって病状が安定するケースが報告されています。

また、従来の抗がん剤と比較して副作用の種類が異なる点も特徴的です。化学療法では吐き気や脱毛、骨髄抑制などが主な副作用ですが、オプジーボでは免疫系が過剰に活性化することで起こる免疫関連有害事象が特徴的な副作用となります。

ただし、すべての患者に効果があるわけではありません。一般的に奏効率は20〜40%程度とされています。効果が得られる患者さんでは劇的な腫瘍縮小が見られる一方、効果が得られない患者さんも一定数存在するのが現状です。

ほかの免疫療法との違い

免疫療法には複数の種類が存在し、それぞれ異なるアプローチでがんと戦います。オプジーボのような免疫チェックポイント阻害薬以外にも、細胞療法やがんワクチンなどがあります。

細胞療法は、患者自身の免疫細胞を体外で培養・活性化させてから体内に戻す治療法です。NK細胞療法や樹状細胞療法、CAR-T細胞療法などが該当し、個別化医療の一環として注目されています。これらの治療法は免疫細胞そのものを増やしたり強化したりするアプローチです。これに対し、オプジーボは体内に既に存在する免疫細胞のブレーキを外すという異なる作用機序を持っています。

がんワクチンは、BCG-CWSやWT1といったタンパク質を体内に投与することで、免疫システムにがん細胞を認識させ、攻撃するよう促す治療法です。オプジーボが免疫のブレーキを解除するのに対し、がんワクチンは免疫のアクセルを踏むようなイメージといえます。オプジーボとの併用で奏功率が向上した論文も出ています。

免疫チェックポイント阻害薬の中でも、オプジーボと同じPD-1を標的とするキイトルーダ(ペムブロリズマブ)や、PD-L1を標的とするテセントリク、イミフィンジなど複数の薬剤があります。また、CTLA-4を標的とするヤーボイという薬もあり、オプジーボとの併用療法が行われることもあり、実にさまざまです。

オプジーボの対象となるがんの種類

オプジーボは当初、悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として承認されました。その後の臨床試験により適応が拡大され、現在では多くのがん種に使用されています。

2025年現在、オプジーボは以下のがん種に対して保険適用となっています。

  • 悪性黒色腫
  • 非小細胞肺がん
  • 腎細胞がん
  • ホジキンリンパ腫
  • 頭頸部がん
  • 胃がん
  • 食道がん
  • 大腸がん
  • 悪性胸膜中皮腫
  • 胸膜を除く悪性中皮腫
  • 尿路上皮がん
  • 上皮系皮膚がん
  • 原発不明がん

大腸がんについては、マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-High)またはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の腫瘍が対象です。この場合、単剤またはヤーボイとの併用で使用されます。また、がんの種類や進行度によって、単剤での使用や化学療法との併用、他の免疫チェックポイント阻害薬との併用など、使用方法が異なります。

オプジーボの効果は、がんの種類によって異なります。一般的に、PD-L1の発現が高い腫瘍ほど効果が得られやすい傾向がありますが、PD-L1陰性でも効果が見られるケースもあり、個人差が大きいのが特徴です。臨床試験のデータでは、悪性黒色腫において特に高い効果が報告されており、進行期悪性黒色腫の患者さんで、5年生存率が約40%に達するという結果も示されています。

オプジーボの副作用

オプジーボは従来の抗がん剤とは異なる作用機序を持つため、副作用の種類や特徴も異なります。免疫系が過剰に活性化することで起こる「免疫関連有害事象」が特徴的です。

最も頻度の高い副作用は皮膚障害で、発疹やかゆみ、乾燥などの症状が現れます。多くは軽度ですが、重症化すると皮膚の広範囲に炎症が及ぶスティーブンス・ジョンソン症候群などの重篤な状態になる可能性があるでしょう。

それ以外の副作用として、以下のような症状が上げられます

副作用の分類詳細特記事項
消化器障害下痢や大腸炎水様便が続く血便が出る腹痛が強い など重症化すると腸管穿孔を起こす危険性がある
肺障害間質性肺疾患息切れ空咳発熱 など重症化すると呼吸不全に至る可能性がある喫煙歴のある方や既存の肺疾患がある方はリスクが高い
肝機能障害血液検査で肝酵素の上昇として発見されることが多く、自覚症状が乏しい重症化すると黄疸や倦怠感が強くなり、劇症肝炎に至ることもある
内分泌障害甲状腺機能異常下垂体機能低下症副腎機能不全1型糖尿病 など下垂体機能低下症や副腎不全は生命に関わる緊急事態となる恐れがある
腎障害尿量の減少むくみ血尿 など手足のしびれや脱力、筋力低下、呼吸困難などの症状に注意が必要

いずれも症状が見られる場合は、速やかに医師の相談してください。

副作用への対処

副作用が発現した場合の対処は、重症度によって異なります。軽度の副作用であれば、オプジーボの投与を継続しながら対症療法を行います。例えば、軽度の皮膚症状に対しては保湿剤やステロイド外用薬を使用し、軽度の下痢には止瀉薬を用うのが一般的です。

中等度以上の副作用では、オプジーボの投与を一時中断し、ステロイド薬による治療を開始します。ステロイド薬は免疫反応を抑制することで、過剰に活性化した免疫系を鎮静化させるのです。プレドニゾロンの内服や、重症例ではメチルプレドニゾロンの点滴投与が行われます。

ステロイド薬が効かない場合は、より強力な免疫抑制薬が使用されることもあるでしょう。副作用が改善したら、慎重にオプジーボの投与を再開します。ただし、重篤な副作用が発現した場合は、オプジーボの投与を永久的に中止する必要があります。

患者自身ができる対処としては、日々の体調変化を記録し、異常を早期に発見できるようにすることが重要です。医療機関から提供される副作用ダイアリーなどを活用してください。また、水分摂取を十分に行い、バランスの良い食事を心がけることも大切です。自己判断で市販薬やサプリメントを使用せず、必ず医療スタッフに相談しましょう。

A Microscopic view of non small cell lung cancer cells, showcasing their intricate structure and unique features. This highlights complexity of cancer at cellular level

オプジーボによるがん治療の治療費用と保険適用

オプジーボは登場当初、非常に高額な薬剤として大きな話題となりました。2014年の発売当初、100mgあたり約73万円という薬価が設定されており、体重60kgの患者さんが標準的な投与量で1年間治療を受けた場合、薬剤費だけで約3500万円かかる計算でした。

その後、複数回の薬価改定により価格は段階的に引き下げられています。2025年現在、100mgあたりの薬価は約17万円まで下がっており、当初の約4分の1の水準となっています。しかし、それでも年間の薬剤費は数百万円に及び、高額な薬剤である点に変わりありません。

実際の自己負担額

オプジーボは適応となるがん種に対して保険適用となります。つまり、3割負担の方であれば薬剤費の3割を支払えばよいことになります。ただし、それでも年間100万円以上の自己負担となる計算です。

そこで重要になるのが高額療養費制度です。この制度により、月ごとの医療費の自己負担額には上限が設けられており、それを超えた分は払い戻されます。自己負担限度額は所得に応じて異なります。例えば、標準報酬月額が28万〜50万円の方の場合、月の自己負担限度額は約8万円です。同じ医療機関での治療が3か月以上続いた場合、4か月目からは多数回該当となり、限度額が約4万4千円に下がります。年収約370万円以下の方はさらに低い限度額が適用される仕組みです。

この制度により、実際の患者さんの負担は月額数万円程度に抑えられることになります。限度額適用認定証を事前に取得しておくと、医療機関の窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができ、一時的な高額支払いを避けられます。この認定証は、加入している健康保険に申請して取得します。ただし、差額ベッド代や食事代などは高額療養費の対象外となる点に注意が必要です。

医療費助成制度で負担が軽減できる可能性がある

高額療養費制度に加えて、各種の医療費助成制度を活用することで、さらに負担を軽減できる場合があります。

自治体によっては、がん患者さん向けの医療費助成制度を設けているところがあります。お住まいの自治体の福祉課や保健所に問い合わせてみましょう。障害者手帳を取得できる状態であれば、自立支援医療(更生医療)や重度心身障害者医療費助成制度などが利用できる可能性があります。

また、民間のがん保険に加入している場合は、保険金の給付対象となることがあります。診断給付金や入院給付金、通院給付金や抗がん剤治療給付金など、契約内容によってさまざまな給付が受けられる可能性があるため、保険会社に確認するようにしてください。

医療機関のソーシャルワーカーや医療相談室では、医療費や利用可能な制度について専門的な相談ができます。また、加入している健康保険組合や協会けんぽの窓口でも、高額療養費制度の詳細について説明を受けられます。治療を開始する前に、これらの相談窓口を活用して、利用できる制度を確認しておくことが大切です。

オプジーボ治療を受ける際の注意点

オプジーボによる治療を安全かつ効果的に進めるためには、治療の各段階でいくつかの重要なポイントがあります。段階別に解説します。

治療開始前

治療を開始する前に、現在の健康状態や既往歴について医師に正確に伝えることが重要です。特に自己免疫疾患の有無や臓器移植の経験、間質性肺疾患の既往などは必ず報告しましょう。自己免疫疾患を持つ患者さんは、オプジーボにより症状が悪化する可能性があるため、原則として使用が制限されます。

服用中の薬剤やサプリメントについても全て医師に伝えなければなりません。免疫抑制薬やステロイド薬を使用している場合、オプジーボの効果に影響する可能性があります。妊娠の可能性がある場合や、妊娠を希望している場合は、治療開始前に医師に相談してください。オプジーボは胎児に影響を及ぼす可能性があるため、治療中および治療終了後一定期間は避妊が必要です。

また、治療の効果や副作用、治療スケジュールや費用などについて、医師から十分な説明を受け、疑問点があれば遠慮なく質問しましょう。納得した上で治療を開始することが大切です。

治療中

治療期間中は、日々の体調変化に注意を払い、異常があればすぐに医療機関に連絡することが大切です。特に注意すべき症状としては、次のような症状があります。

  • 発熱
  • 息切れ
  • 空咳
  • 頻回の下痢
  • 血便
  • 腹痛
  • 発疹
  • かゆみ
  • 倦怠感の増強
  • 体重減少
  • のどの渇き
  • 尿量の変化
  • 手足のしびれや脱力 など

体温や体重、排便回数や食事量などを日常的に記録しておくと、異常の早期発見につながります。医療機関から提供される症状チェックシートや副作用ダイアリーを活用しましょう。

また、オプジーボによる治療中は、定期的な検査が欠かせません。血液検査は通常、投与前ごとに実施され、肝機能や腎機能、甲状腺機能や血糖値などがチェックされるのが一般的です。これにより、副作用の早期発見が可能になります。

画像検査(CTやMRIなど)は2〜3か月ごとに行われ、治療効果の判定に用いられます。これらの検査は必ず受けるようにしましょう。

日常生活

オプジーボによる治療中も、基本的には通常の生活を続けることができます。ただし、いくつかの点に配慮が必要です。

もっとも重要なのが、感染症予防です。免疫系が活性化している状態ですが、副作用で免疫抑制薬を使用することもあるため、手洗いやうがいを励行し、人混みを避けるなどの対策を心がけましょう。適度な運動は推奨されますが、激しすぎる運動は避け、体調に合わせて無理のない範囲で行ってください。散歩や軽いストレッチなど、自分のペースでできる運動を続けるのがベストです。

食事については、バランスの良い食事を心がけることが基本です。特定の食品を避ける必要は通常ありませんが、生ものや加熱不十分な食品は感染症のリスクがあるため注意が必要です。アルコールは肝機能への影響を考慮し、控えめにするか医師に相談してください。

日光に対する感受性が高まることがあるため、外出時は帽子や日傘を使用し、日焼け止めを塗るなどの紫外線対策を行います。また、治療中は疲れやすくなることがあるため、十分な休息を取ることも大切です。無理をせず、体調に合わせて活動量を調整しましょう。

まとめ

オプジーボは、免疫の力を利用してがんと戦う画期的な治療薬です。長期的な効果が期待できる点や、化学療法とは異なる副作用プロファイルを持つ点が特徴です。一方で、すべての患者さんに効果があるわけではなく、免疫関連有害事象という特有の副作用にも注意が必要になります。

オプジーボによる治療を検討する際は、主治医と十分に相談し、期待される効果とリスク、費用などについて理解を深めることが大切です。また、治療中は体調変化に注意を払い、異常があれば速やかに医療機関に連絡しましょう。医師と協力しながら、前向きに治療に取り組んでいくことが重要です。

ご予約・お問い合わせ

RESERVATION

診療時間
火・木・金    10:00-13:00 / 14:00-17:00
土曜          10:00-13:00 / 14:00-17:00
休診          月曜・水曜・日曜・祝日

※最終受付は30分前(12:30、16:30)

ページの上部に戻る