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オーダーメイド医療とは?メリット・デメリットから最新の活用例まで徹底解説

近年の医療技術の進歩により、患者一人ひとりの体質や遺伝情報に合わせた治療を提供する「オーダーメイド医療」が注目を集めています。従来の画一的な治療法とは異なり、個人の特性に最適化された医療アプローチは、治療効果の向上や副作用の軽減につながると期待されているのです。

本記事では、オーダーメイド医療の基礎知識から実用例、今後の展望まで詳しく解説します。

オーダーメイド医療(個別化医療)とは

オーダーメイド医療とは、患者個人の遺伝子情報や体質、病歴や生活習慣などを詳細に分析し、それぞれに最も適した治療法や薬剤を選択する医療アプローチです。英語では「Personalized Medicine」と呼ばれ、日本語では「個別化医療」「精密医療(Precision Medicine)」とも表現されます。

従来の医療では、同じ病気に対して多くの患者に同じ治療法が適用されていました。しかし実際には、人それぞれ遺伝的背景が異なるため、同じ薬を服用しても効果や副作用の出方には大きな個人差が生じるのが現実です。オーダーメイド医療は、こうした個人差を科学的に分析し、各患者に最も効果的で安全な治療を提供することを目指しています。

特に重要なのが「1塩基多型(SNPs:スニップス)」と呼ばれる遺伝子の個人差です。人間のDNAは約30億個の塩基配列で構成されていますが、その配列の一部が人によって異なるのです。この違いが、体質や病気のかかりやすさ、薬の効き方などに影響を与えています。

レディーメイド医療との違い

レディーメイド医療とは、既製品のように標準化された治療法を指します。従来の医療の多くはこのレディーメイド型であり、統計的に多くの患者に効果が認められた治療法を広く適用してきました。

一方、オーダーメイド医療は個々の患者に合わせた「注文製作」の治療です。レディーメイド医療が「万人向けの既製服」だとすれば、オーダーメイド医療は「一人ひとりに合わせた仕立て服」といえるでしょう。

レディーメイド医療には、標準化による安全性や費用対効果の高さというメリットがあります。しかし、個人差への対応が不十分なため、効果が出ない患者や副作用に苦しむ患者が一定数存在していました。オーダーメイド医療は、このような課題を解決する新しいアプローチとして期待されています。

オーダーメイド医療を可能にする遺伝子情報

オーダーメイド医療の実現を支えているのが、急速に進歩した遺伝子解析技術です。遺伝子情報の解読コストは劇的に低下しており、かつては数億円かかった全ゲノム解析も、現在では数十万円程度で実施できるようになりました。

遺伝子情報から得られる重要な知見のひとつが、薬の代謝に関わる酵素の働きです。たとえば、ある薬を分解する酵素の遺伝子に多型があると、薬の代謝速度が人によって大きく異なります。代謝が速い人では薬が十分に効かず、逆に遅い人では薬が体内に蓄積して副作用が強く出る可能性があるのです。

また、がん治療の分野では、がん細胞に特有の遺伝子変異を特定することで、効果的な治療薬を選択できるようになってきました。同じ種類のがんでも、患者ごとに異なる遺伝子変異を持っているため、その変異に対応した分子標的薬を使用することで高い治療効果が得られるのです。

遺伝子パネル検査と呼ばれる技術では、一度に数十から数百の遺伝子を同時に調べることができ、がん治療における薬剤選択の精度が飛躍的に向上しています。さらに、生活習慣病や精神疾患など、幅広い分野で遺伝子情報を活用した治療の研究が進められています。

オーダーメイド医療のメリット

オーダーメイド医療には、従来の医療にはない多くの利点があります。代表的なものは、次の3つ4つです。

  • 治療効果を最大化できる
  • 副作用のリスクを軽減できる
  • 早期の社会復帰が可能になる可能性がある
  • 遠方の方でも受けやすい

それぞれ詳しく解説します。

治療効果を最大化できる

患者個人の遺伝情報や体質に基づいて治療法を選択するため、最初から効果が高い治療を提供できます。従来のように試行錯誤で薬を変更する必要が減り、治療期間の短縮にもつながるでしょう。

特にがん治療では、遺伝子検査によって特定の分子標的薬が効果的かどうかを事前に判断可能です。効果が期待できない治療を避け、患者にとって最適な選択肢を最初から選べることは大きな意義があります。たとえば、肺がんの一部では「EGFR遺伝子変異」を持つ患者に対して特定の分子標的薬が高い効果を示すことが知られています。

このように、治療初期から高い効果が期待できる選択が可能な点がオーダーメイド医療の特徴と言えるのです。

副作用のリスクを軽減できる

遺伝子情報から薬の代謝能力を予測することで、副作用が出やすい薬を避けたり、適切な投与量を設定したりできます。重篤な副作用を未然に防ぐことは、患者の安全性向上に直結するのです。

たとえば、抗がん剤の中には特定の遺伝子型を持つ患者で重い副作用が出やすいものがあります。事前の遺伝子検査でこうしたリスクを把握し、別の治療法を選択することが可能です。また、血液をサラサラにする抗凝固薬など、投与量の調整が重要な薬剤でも、遺伝子情報に基づいた適切な用量設定により安全性が高まります。

副作用による入院や追加治療が減ることは、患者の負担軽減だけでなく、医療経済的なメリットにもつながります。

早期の社会復帰が可能になる可能性がある

効果的な治療を最初から受けられることで、治療期間が短縮され、仕事や日常生活への早期復帰が期待できます。試行錯誤による時間のロスや、副作用による体調不良で休養を余儀なくされる期間が減ることは、患者の生活の質(QOL)向上に大きく貢献するでしょう。

特に働き盛りの年代の患者にとって、治療による社会生活への影響を最小限に抑えられることは重要です。また、高齢者においても、不必要な副作用を避けることで、身体機能の維持や介護予防につながる可能性があります。

医療費の適正化という観点からも、効果が低い治療や不必要な試行錯誤を減らすことで、長期的には医療費の削減が期待されているのです。

遠方の方でも受けやすい

分子標的薬は通常の全身の正常細胞にも害を与える抗がん剤とは異なり、ピンポイントでその遺伝子変異が原因となったがん細胞のみを攻撃するため、副作用が少ないことがメリットです。

それに加えて、内服での治療となり、遠方から毎日のようにクリニックや病院に通院する必要がないため、都心部に住まれていない方でも行いやすい治療法になります。

オーダーメイド医療のデメリットと課題

多くのメリットがある一方で、オーダーメイド医療にはいくつかの課題も存在します。代表的なものに、次の3つがあります。

  • 検査・治療費が高額化しやすい
  • 対応治療薬には限界がある
  • 個人情報保護に問題がある

普及に向けて解決すべき問題点を見ていきましょう。

検査・治療費が高額化しやすい

遺伝子検査や特殊な治療薬は、執筆時点では高額になる傾向があります。一部の検査や治療は保険適用されているものの、すべてがカバーされているわけではないためです。

特に包括的な遺伝子パネル検査は数十万円から100万円以上かかる場合もあり、経済的な負担が大きいことは事実です。また、遺伝子検査の結果に基づいて選択される分子標的薬の中には、非常に高額なものも存在します。そのため、保険適用の拡大や検査コストの低減が、今後の普及に向けた重要な課題と言えるでしょう。

一方で、技術の進歩により検査費用は年々低下しており、将来的にはより多くの患者が利用できる価格帯になることが期待されています。経済的な理由でオーダーメイド医療を受けられない患者が生じないよう、公平なアクセスを確保する仕組みづくりが求められます。

対応治療薬には限界がある

遺伝子検査で特定の変異が見つかっても、それに対応する治療薬がまだ開発されていないケースが少なくありません。検査技術は急速に進歩していますが、治療法の開発が追いついていない分野も多いのが現状です。

また、日本国内で承認されていない薬が海外では使用されている場合もあり、国内での治療選択肢が限られることもあります。遺伝子検査を受けても、結果として有効な治療法が見つからないという可能性があることは、患者にとって心理的な負担となる場合もあるでしょう。

さらに、がん細胞は治療中に新たな変異を獲得して薬剤耐性を示すこともあり、一度効果があった治療が長期的には効かなくなる問題も存在します。オーダーメイド医療は万能ではなく、継続的な研究開発が必要とされているのです。

個人情報保護に問題がある

遺伝子情報は、究極の個人情報ともいえる機密性の高いデータです。一度流出すれば取り返しがつかず、本人だけでなく血縁者にも影響が及ぶ可能性があります。

データの漏洩や不適切な使用があった場合、個人のプライバシーが侵害されるだけでなく、保険加入や雇用における差別につながる懸念もあります。たとえば、将来の病気リスクが高いという遺伝情報が雇用主や保険会社に知られた場合、不利益を被る可能性が否定できません。

遺伝情報の厳格な管理体制の整備や、法的な保護枠組みの構築が急務です。日本でも個人情報保護法の改正などで対応が進められていますが、技術の進歩に法整備が追いつかない側面もあります。患者が安心して遺伝子検査を受けられる環境づくりが求められているのです。

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オーダーメイド医療の具体的な活用例

現在、オーダーメイド医療はさまざまな分野で実用化が進んでいます。ここでは、現在実用化している具体的な活用例を見ていきましょう。

分子標的治療薬

分子標的治療薬は、がん細胞に特有の分子を標的とする薬剤であり、オーダーメイド医療の代表例です。患者のがん細胞に特定の遺伝子変異や特定のタンパク質の発現があることが確認された場合に使用されます。

  • 肺がんにおける「EGFR遺伝子変異」陽性の患者に対するEGFR阻害薬
  • 乳がんにおける「HER2タンパク質」陽性の患者に対する抗HER2薬 など

これらの薬剤は、従来の抗がん剤に比べて正常細胞へのダメージが少なく、高い治療効果と副作用の軽減を両立できます。

また、大腸がんや悪性黒色腫(メラノーマ)などでも、特定の遺伝子変異に対応した分子標的薬が使用されています。がん治療におけるオーダーメイドアプローチは、今後さらに多くのがん種に広がっていくでしょう。

遺伝子パネル検査

遺伝子パネル検査は、一度に数十から数百の遺伝子を同時に調べる包括的な検査です。特にがん治療において、複数の遺伝子変異を網羅的に調べることで、最適な治療薬を選択できます。

従来は一つひとつの遺伝子を個別に検査していましたが、遺伝子パネル検査では一度の検体採取で多数の遺伝子情報が得られるため、効率的かつ包括的な診断が可能です。標準治療が効かなくなった進行がん患者にとって、新たな治療選択肢を見つける手段として期待されています。

日本では、2019年から一部の遺伝子パネル検査が保険適用となり、より多くの患者が検査を受けられる環境が整いつつあります。また、「がんゲノム医療」として、全国のがんゲノム医療中核拠点病院を中心に実施体制が構築されているのです。

遺伝子パネル検査の結果は、専門家による「エキスパートパネル」で検討され、患者に最適な治療方針が提案されます。

オーダーメイド医療の現状と将来展望

オーダーメイド医療は急速に発展しており、今後はさらに幅広い疾患への応用が期待されています。最後に、オーダーメイド医療の現状と将来の展望を見ていきましょう。

技術進歩によるコスト低減ができる

遺伝子解析技術の急速な進歩により、検査コストは年々低下しています。次世代シーケンサー(NGS)と呼ばれる解析装置の普及により、短時間で大量の遺伝情報を読み取ることが可能になりました。

かつては数億円かかった全ゲノム解析も、現在では数十万円程度で実施可能です。技術の普及と競争によるコスト低減が進めば、将来的には数万円程度で包括的な遺伝子検査を受けられる時代が来る可能性もあります。

コスト低減により、より多くの患者がオーダーメイド医療の恩恵を受けられるようになるでしょう。

AIとの融合による精度向上が可能になる

人工知能(AI)技術を活用することで、膨大な遺伝子情報や臨床データから最適な治療法を予測するシステムの開発が進んでいます。機械学習やディープラーニングといった技術により、人間では気づけないパターンを発見し、より精度の高い診断や治療方針の提案が可能となるでしょう。

AIによる画像診断支援や、遺伝子変異と薬剤効果の関連性予測など、オーダーメイド医療のあらゆる場面でAI活用が期待されています。医師の判断を支援するツールとして、AIはオーダーメイド医療の発展に大きく貢献する可能性があるのです。

予防医療への展開が期待される

将来的には、病気になる前に遺伝的リスクを評価し、生活習慣の改善や予防的介入を行う「予防医療」の分野でもオーダーメイドアプローチが活用される見通しです。個人の体質に合わせた健康管理が、一般的になる日も近いかもしれません。

たとえば、生活習慣病のリスクが高い遺伝的特徴を持つ人に対して、早期から食事指導や運動療法を行うことで、発症を予防できる可能性があります。また、薬の副作用リスクを事前に把握しておくことで、より安全な医療を提供できます。

予防医療への展開は、医療費削減と国民の健康寿命延伸という社会的課題の解決にもつながる重要なテーマです。

まとめ

オーダーメイド医療は、患者一人ひとりの遺伝情報や体質に基づいて最適な治療を提供する先進的な医療アプローチです。治療効果の向上や副作用の軽減、早期の社会復帰といった多くのメリットがある一方、高額な費用や対応治療薬の不足、個人情報保護といった課題も残されています。

現在はがん治療を中心に実用化が進んでおり、分子標的薬やコンパニオン診断、遺伝子パネル検査、薬剤代謝酵素の検査などが臨床現場で活用されています。技術の進歩とコスト低減、AIとの融合により、今後はより多くの患者がオーダーメイド医療の恩恵を受けられるようになるでしょう。予防医療への展開も期待されており、医療の個別化は21世紀の重要なトレンドとなっていくと考えられます。

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