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高齢のご家族が癌と診断されたとき、「治療を受けるべきか」「治療しない場合はどうなるのか」と悩む方は少なくありません。特に80代、90代といった超高齢者の場合、抗がん剤や手術による身体への負担を考えると、積極的な治療を避けたいと考えるケースも増えています。
本記事では、高齢者の癌を治療しない場合の余命や身体への影響、緩和ケアの重要性について詳しく解説します。
医学的に「高齢者」とは何歳からを指すのでしょうか。日本老年医学会では、65歳以上を高齢者と定義しており、65〜74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と分類しています。さらに近年では、85歳以上を「超高齢者」と呼ぶこともあります。
ただし、癌治療の現場においては、暦年齢だけで判断することは適切ではありません。同じ80歳でも、自立した生活を送れる方と介護が必要な方では、治療への耐性が大きく異なるためです。静岡がんセンターでも、高齢者の癌治療においては年齢よりも「全身状態」や「臓器機能」を重視すべきだと提唱しています。
このように、一概に高齢者と言っても、行政が定める基準と医療における定義が異なっている点には注意が必要です。
「高齢者の癌は進行が遅い」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。確かに、一部の癌では高齢者において進行が緩やかなケースが報告されています。しかし、すべての高齢者の癌に当てはまるわけではありません。
癌の進行速度は、年齢よりも癌の種類や悪性度、発見時のステージに大きく左右されます。膵臓癌や肺癌の小細胞癌などは年齢に関係なく進行が速い傾向がある一方、前立腺癌や甲状腺癌の一部では高齢者において進行が緩やかなケースも見られます。
高齢だから安心というわけではなく、個々の癌の特性を理解した上で判断することが重要です。
高齢者が癌の治療をしない場合、余命はどの程度になるのでしょうか。結論として、余命は癌の種類やステージ、患者さんの全身状態によって大きく異なり、一概に述べることはできません。パターン別に、それぞれ詳しく解説します。
癌の種類によって、治療しない場合の予後は大きく異なります。膵臓癌の場合、臨床試験のデータでは無治療の患者さんの生存期間中央値は約72日(約2か月半)との報告があります。
肺癌については、高齢者で治療しない場合の余命は数か月から1年程度とされることが多いですが、癌のタイプによって差があるのも事実です。大腸癌や胃癌も進行度によって異なり、早期癌であれば無治療でも数年単位で生存するケースがある一方、進行癌では数か月から1年程度となることが一般的です。
癌のステージ(進行度)も余命に大きく影響します。ステージ1(早期)では癌が臓器内にとどまっており、治療しなくても比較的長期間の生存が見込めるケースもあります。
ステージ2〜3(中期)では癌が周囲に広がりつつあり、無治療の場合は数か月から1〜2年程度で進行していく可能性が高まるでしょう。ステージ4(末期)は癌が遠隔臓器に転移している状態であり、治療をしても根治は難しく、治療するかしないかで余命に大きな差が出ないケースもあります。
国立がん研究センターが公表している余命データによれば、余命は全身状態によって異なるとされています。全身状態を示す指標として「パフォーマンスステータス(PS)」が用いられますが、日常生活の自立度によってPS0~PS4まで分類されます。
70代、80代、90代と年齢が上がるにつれて一般的に余命は短くなる傾向がありますが、個人差は非常に大きいのが実情です。同じ年齢でも、日常生活を自立して送れる方と介護が必要な方では、予後に大きな差が生じることを理解しておく必要があります。
高齢者やそのご家族が、積極的な癌治療を選択しないケースが増えています。その背景には、いくつかの理由がありますが、代表的なものは以下の4つです。
それぞれ詳しく見てみましょう。
抗がん剤治療は、吐き気や倦怠感、脱毛や免疫力低下などの副作用を伴います。高齢者は若年者に比べて副作用が出やすく、回復にも時間がかかります。治療によって寝たきりになってしまうリスクを考え、「残された時間を副作用に苦しまず過ごしたい」と考える方も少なくありません。
また、手術についても全身麻酔のリスクや術後の回復力の問題があります。特に80代~90代では術後に体力が回復せず、かえって生活の質が低下してしまうケースも報告されています。
「治療によって数か月延命できたとしても、その期間を苦しんで過ごすよりは、残された時間を穏やかに過ごしたい」という価値観を持つ方が増えています。特に自分らしい生活を大切にしてきた方にとって、治療による制限や長期の入院生活は受け入れがたいものかもしれません。
QOLを重視する考え方は、決して「治療を諦める」ということではなく、自分にとって何が大切かを考えた上での積極的な選択といえます。
「孫の結婚式に出席したい」「自宅で家族と過ごしたい」「最期まで自分の足で歩いていたい」など、具体的な目標がある場合、それを優先して治療を控える選択をされる方もいます。
限られた時間をどう使うかは、ご本人の人生観に深く関わる問題です。治療に費やす時間やエネルギーを、本当にやりたいことに使いたいという思いは、十分に尊重されるべきものです。
癌治療には高額な費用がかかることがあります。高額療養費制度などの公的支援制度はありますが、「家族に経済的な負担をかけたくない」「老後の蓄えを治療費で使い果たしたくない」という思いから治療を断念されるケースも見られます。
経済的な理由で治療を諦めざるを得ない状況は本来あってはなりませんが、現実にはこうした悩みを抱える方がいることも事実です。
癌を治療しない場合、病状の進行に伴ってさまざまな身体の変化が起こります。初期から終末期にかけての身体の変化を、順番に見てみましょう。
癌が進行し始めると、体重減少や食欲低下、倦怠感といった症状が現れ始めます。痛みが出る部位は癌の種類や場所によって異なり、骨に転移した場合は骨の痛み、肝臓に転移した場合は腹部の違和感などが生じるでしょう。
また、日常生活への影響としては、長時間の外出が困難になる、家事がおっくうになるなどの変化が見られます。ただし、適切な症状コントロールによって、ある程度の生活の質を維持できる場合も多いです。
癌がさらに進行すると、全身の衰弱が顕著になります。食事量が減り、栄養状態が悪化することで筋力が低下し、自力での歩行や日常動作が困難になっていきます。浮腫(むくみ)や腹水、胸水がたまることもあり、腹水がたまると腹部の膨満感や呼吸困難を感じ、胸水がたまると息苦しさが増すでしょう。癌性疼痛が強くなることもあり、適切な疼痛管理が必要になります。
癌による腹水については、こちらの記事でも詳しく解説しています。参考にしてください。
【関連記事】腹水がたまると余命はどのくらい?原因別の目安と治療法を詳しく解説
終末期には、意識レベルの低下、呼吸の変化、血圧の低下などが見られます。食事や水分の摂取が難しくなり、一日のほとんどを眠って過ごすようになることが多いです。
終末期の症状や経過には個人差が大きく、穏やかに眠るように旅立たれる方もいます。緩和ケアの専門家と連携することで、できる限り苦痛を和らげながらこの時期を過ごすことが可能です。
癌の積極的な治療をしない場合でも、「何もしない」わけではありません。緩和ケアによって痛みやその他の苦痛を和らげ、残された時間を可能な限り快適に過ごすことができます。緩和ケアについて、詳しく見てみましょう。
痛みのコントロールは緩和ケアの中心的な役割です。癌の痛みには医療用麻薬を含むさまざまな鎮痛薬が使用され、適切に使用すれば依存症になることはほとんどなく、痛みを効果的に抑えられるでしょう。呼吸困難や吐き気、便秘や不眠などの症状に対しても、それぞれに対応した薬物療法やケアが提供されます。
精神的なサポートも緩和ケアの重要な要素です。不安や抑うつ、死への恐怖といった心理的苦痛に対して専門スタッフがカウンセリングやサポートを行います。
緩和ケアは、病院の緩和ケア病棟、一般病棟での緩和ケアチーム、在宅での訪問緩和ケアなど、さまざまな場所で受けることができます。自宅で最期を迎えたいという希望がある場合は、訪問診療や訪問看護を利用した在宅緩和ケアが選択肢となります。
一方で、24時間体制で対応してくれる訪問診療クリニックも増えており、自宅でも病院と同様の症状コントロールを受けることが可能です。どの場所で過ごすかは、ご本人やご家族の希望に合わせて選択できます。
「抗がん剤治療は何歳まで受けられるのか」「80歳を過ぎたら治療はしない方がいいのか」といった疑問を持つ方は多いでしょう。
結論として、治療の可否を年齢だけで判断することはできません。癌治療を行うかどうかの判断において、暦年齢よりも重要なのは「全身状態」です。90歳でも自立した生活を送れる方であれば治療の選択肢がありますし、70代でも基礎疾患が多く全身状態が悪ければ治療のリスクが高くなります。
近年は「高齢者機能評価(CGA)」を用いて、身体機能や認知機能、栄養状態などを総合的に評価した上で治療方針を決定する方法が推奨されています。
高齢者の癌治療について、「治療すべきか」「しないべきか」の正解はありません。大切なのは、ご本人とご家族が十分な情報を得た上で、納得のいく選択をすることです。そのために必要なことを、以下にまとめました。
まず重要なのは、主治医から十分な説明を受けることです。癌の種類やステージ、治療の選択肢、それぞれの治療を受けた場合と受けなかった場合の見通しについて、わからないことがあれば遠慮なく質問しましょう。
「治療しない場合の余命はどのくらいですか」「治療した場合、どの程度の延命効果が期待できますか」「治療による副作用やリスクはどの程度ですか」といった具体的な質問をすることで、より実情に即した情報を得ることができます。
主治医の説明だけでは判断がつかない場合、セカンドオピニオンを受けることも検討してください。別の専門医の意見を聞くことで、より多角的な視点から治療方針を考えることができます。
セカンドオピニオンは「主治医を信頼していないから受ける」ものではなく、重要な決断をする際に複数の専門家の意見を聞くことは当然の権利です。多くの病院ではセカンドオピニオン外来を設けており、紹介状があればスムーズに受診できます。
ご本人を含めた家族での話し合いも大切です。治療に対する考え方、最期をどこで過ごしたいか、延命治療についての希望など、普段はなかなか話しにくいテーマです。しかし、癌と診断されたことをきっかけに率直に話し合っておくことで、後々の後悔を減らすことができます。
ご本人の意思を家族全員で共有しておくことが、いざというときの判断の支えになります。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は、将来の医療やケアについてご本人を主体としてご家族や医療従事者が一緒に話し合い、ご本人の意思を共有するプロセスです。「人生会議」とも呼ばれています。
元気なうちからACPを行っておくことで、いざというときにご本人の意思が尊重された医療を受けることができるでしょう。癌と診断されたことをきっかけに、ACPについて考え始めることをおすすめします。
高齢者の癌を治療しない場合の余命は、癌の種類、ステージ、患者さんの全身状態によって大きく異なります。ただし、「治療しなければすぐに命を落とす」わけではなく、癌の種類によっては数か月から数年の余命が見込めるケースもあります。
重要なのは、ご本人の価値観や希望を尊重した上で、最善の選択を一緒に考えることです。積極的な治療を選ばなくても、緩和ケアによって残された時間を穏やかに過ごすことは可能です。主治医や専門家の力を借りながら、納得のいく選択を見つけてください。
また、銀座がん医療クリニックでは、がん免疫療法やプレシジョンメディシンをはじめとした先進的な治療をご提案しています。「もうできることはない」と言われた方も、まずはご相談ください。一人ひとりの患者さんに寄り添い、最善の治療を一緒に考えていきます。
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